訪問歯科診療とは

訪問歯科診療とは、通院が難しくなった要介護高齢者や有病者の方が在宅や施設で歯科診療が受けられるサービスです。

歯や口周りの機能を維持することを口腔ケアと呼び、医療職やコメディカルの間で重要視されています。口腔の機能を維持することはは食べるという機能ばかりでなく、生きる力や発語、QOLの向上に必要不可欠であると注目されています。

しかし、要介護高齢者の多くは歯科的な問題を抱えているにも関わらず、体力の低下等の理由から歯科受診は70～74歳をピークに、その後急速に減少します。

身近なかかりつけの歯科医などに相談し、外来受診が困難な場合であっても治療や口腔の機能を維持することを意識できれば、よりよい生活が送ることができるでしょう。

訪問診療の難しさ

①器具や診療環境の制限

基本的には、訪問歯科診療で行われる診療内容は歯科医院で行われる治療と同じものです。

しかし、X線の診断機器が使えなかったり、治療時の姿勢の保持や照明など制約の中で治療方針を立てていくので、治療内容によって診療所で受診することが必要になったり、対症療法で様子を見ていくことになる場合もあります。

②医科歯科連携の重要性

また、歯科医院で通院が困難となるには全身的な問題がある場合が多いので、歯科医師が患者の全身状態を把握するために、かかりつけの医師と通常以上に密な連携が求められます。

入院前にかかりつけの歯科医院を持っていても、重大な病気を発症した際は、急性期病院等への入院から回復期・施設入所等へ移っていく間に歯科医師・患者関係が途切れてしまい、退院後の在宅療養時にかかりつけ医とかかりつけ歯科医との連携が取れていないために、結果的に口腔内状態の悪化や義歯治療などの対応が放置されるという悪循環を招いていることが多く見受けられました。

大事なことは歯科医院の通院が困難となった場合に、本人やご家族が歯科治療を受けることをあきらめないことです。

③歯科的な問題点だけではなく、患者さんとの信頼関係が必要

歯科訪問診療は自宅にお伺いするといった特殊性があるがゆえに、患者さんからの要求や気持ちの変化を察知し、細やかな気遣いができなければなりません。

ただ歯科的な問題点を解決するだけではありません。生活環境や介護状況、精神的状況を包括的に把握して対処をしていきます。一般歯科治療においても同じではありますが、歯科訪問診療においては一層、患者さんやご家族の意思を尊重しなければならないと考えます。

歯科訪問診療で解決できる問題は多い

歯科訪問診療をしている患者の問題には、義歯の不適合・むし歯に伴う歯の痛みや・歯ぐきの腫れ・口内炎などがあげられます。

これらの多くは訪問歯科診療で対応することができます。口腔内の不具合は直接的に食事の意欲の低下につながります。さらには口腔清掃状態の悪化は、誤嚥性肺炎の原因にもなり、歯科医師や歯科衛生士による定期的なチェックが必要です。

また、噛むことや飲み込むことの障害（咀嚼・嚥下障害）がみられることがあり、口腔機能低下の早期の発見とリハビリテーションが必要です。そして人生において最後まで口から食べるための歯科的対応は、QOL向上のために非常に重要と考えます。

訪問診療を行う際に必要な手続き

かかりつけの歯科医院がある場合には訪問診療をご依頼ください。その歯科医院で対応が難しい場合には、他の医療機関の紹介してくれると考えられます。

あるいは市町村保健センターなどの行政機関や主治医・介護職など身近の担当者に問い合わせれば、地域でのネットワークがすでに整備されていることが多いので解決につながります。

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