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歯を失うとどうなる?くま先生が教える歯と身体の健康の関係

口の中に歯があることがあたりまえだと思っていませんか? 

若い人であれば、あまり考えられないことかもしれませんが、40代からは歯周病が進行し、歯を失いはじめる人も出てきます。

歯周病や虫歯、あるいは事故で歯を失うことになってしまっても、
「歯を数本失ったところで、ちょっと噛みにくくなるくらいでしょ」
と考える方も多いかもしれません。

しかし、歯を抜けたままにすることで、身体や生活にはさまざまな異変があらわれはじめます。それはみなさんが考えられているよりもずっと深刻です。この記事では、歯を失うとどのような問題が現れるのかをくま先生が解説します。

発音や外見に変化がでてくる

歯がなくなることにより身体にさまざまな変化があらわれてきます。

まず起こるのは、発音の変化です。特に上顎の前歯は発音に深く関わっており、「s」や「t」の音を出すのに重要な役割を果たしています。そのため、前歯を失うと、「さしすせそ」や「たちつてと」は発音しにくくなります

そして、次に変化するのは、外見です。歯がなくなると、口元の位置が下がります。通常であれば、歯があったために膨らんでいた頬や口元もしわしわになってしまい、急激に歳をとったように見えてしまいます。歯がないと顔面の皮膚にシワが入りやすくなり、同年代の人立ちよりもシワやほうれい線の目立つ老けた顔付きになりやすいのです。

加えて、口臭も発生しやすくなります。歯が抜けたスペースは穴が空いたままです。塞がれない限りは、食べかすが溜まりやすく、歯磨きやうがいでは除去できなくなっていきます。その食べかすからは、異臭が発生し口臭もきつくなるようになってしまうのです。

発音の弊害や見た目の変化、口臭による影響の結果、人に会いたくないと感じてしまう人も多いようです。実際に、高齢者の歯の数が減ると引きこもりになる人が多いことが東北大学大学院歯学研究科の研究で明らかになっています

外出頻度が週1回未満の引きこもりは、社会的孤立や身体活動量の低下など健康への悪影響を引き起こし、要介護リスクや死亡率の増加、認知機能の低下につながる恐れがあります。

歯を失うことで、こういった孤立を産んでしまう可能性がでてくるのです。

認知症になりやすくなる

歯の減少は、認知症を引き起こす原因になる可能性があります。ある調査では、噛み合わせや咀嚼がよくできる状態の人と比べると歯が少ない人はアルツハイマーや認知症の発症率が1.5倍と高くなるという報告があり、歯は失うほど脳の働きが悪くなることがわかっています。

また、他の調査では、健康な高齢者とアルツハイマー患者を比較すると、アルツハイマー患者の口の中に残っていた歯の本数が3分の1程度しかなかったという報告もあります。意外に思われるかもしれませんが、歯と認知症は非常に深いところでつながりあっているのです

歯を失ってしまった人でもすぐに治療をはじめ、入れ歯やインプラントなどで噛む力が損なってなければ、認知症のリスクは上がることはないでしょう。

消化器官に負担も

歯を失うと、自然と硬いものを避けるようになります。柔らかいものを選んで食べるようになると、栄養バランスに傾きが出ます。柔らかい食べ物には炭水化物が多いためです。さらにあまり噛まずに飲み込むようになるという変化もみられます。

口は胃や腸と同じように、消化器官だと言えます。それも、最初の消化器官です。その役割は、細かく食べ物を噛み砕き、唾液に含まれる消化酵素を十分に働かせて、次の胃や腸にバトンパスするということ。この口というパートで全く噛まずに飲み込んでしまうと、胃や腸に強い負担がかかることは想像に難くありません。胃がもたれやすくなったり、排便習慣にも悪影響が及ぶことも考えられます。

歯を失うと、消化器官への負担も大きくなると言えます。

噛み合わせの歪みから起こる体全体の歪み

歯が抜けてしまうと、噛み合わせが狂います。今まで噛んでいた歯で噛めなくなるためです。そして、長い間、片方の歯だけばかりで噛んでいると、よく使われた歯だけすり減っていきます。そうして少しずつ上下左右のバランスが崩れていきます。

このような状態を噛み合わせが悪いと言います。噛み合わせは歯が全てある人であっても、よくない状態の人もいるため注意が必要です。

噛み合わせが悪いと様々な悪影響が身体に及ぼします。まずわかりやすいのは顔です。これは記事の最初の項目でも紹介しましたが、使われない咀嚼筋が衰え、片方だけに垂水や広角が上がらなくなり、先ほどと同じようにシワやほうれい線ができやすくなります。

さらに、肩こり、頭痛、膝の痛み、腰痛などにも影響をします。噛み合わせは歯の問題ですが、その不具合は口の周辺だけでなく全身にまで波及してしまうのです。その挙句、不眠になったり、日常的に倦怠感を覚えて生活するようになったりなど、問題は口の中だけに収まりません。

噛み合わせが重要であることはご存じの方も多いかもしれませんが、身体にまで深く影響を及ぼします。歯を失うことが体のバランスを崩すきっかけになりやすいことがお分かりいただけると思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。奥歯が抜けてしまうと、咀嚼する能力が30パーセント落ちると言います。その状態では、やはり食事もままならず、全身が不健康になっていってしまうでしょう。

口や歯は消化器官であり、かつ、体全体のバランスを握る重要な部位です。もし不幸にも歯を失うことがあればすぐに歯科医に相談してみましょう。

監修

コンシェルクリニックグループ代表

日本抗加齢医学会 専門医


小谷 航(こたに わたる)

現在は全国10院で各種専門医が協力して顎顔面領域に特化した医療を展開しております。治療のコンセプトはアンチエイジング、究極の予防を標榜しております。
アンチエイジングの考え方のもと、皆様と一緒に長い人生を歩んでいければと考えております。よろしくお願いいたします。


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投稿者プロフィール

くま先生
くま先生
アンチエイジングをコンセプトに治療するくま先生。歯や美容医療や薬など得意分野は多岐に渡る。教えてくま先生!と言われれば、一人ひとりの患者さんに寄り添ったコンシェルジュ的な存在として、どんな分野でも的確にアドバイスしていきます。患者さんだけでなく、先生たちにもアドバイスするよ。みんな、頼ってきてね。