くま先生に言われて運動をするようにしてみたんですが、筋肉ってなかなかつかないものなんですね。
もしかして栄養が足りていないのかもしれないですね!
プロテインを摂ってみたらどうですか。
プロテインってしっかりトレーニングをしているアスリートの人が摂るものじゃないんですか?
ふだん不足しがちな栄養を補うことができ、疲労回復や美容への効果も期待できるんですよ。
プロテインってそんなにすごいんですね。
詳しく教えてほしいです。
わかりました。
今回は、プロテインについて解説していきますね。
最近よく耳にする「プロテインダイエット」という言葉。
芸能人の「毎日プロテインを飲んでいる」「小さいころからプロテインを飲んでいた」という話もよく聞きますね。
プロテインという言葉自体は、前からなんとなく聞いたことがあったという人は多いと思いますが、それはあくまでボディビルダーの方たちが飲んでいるものというイメージだったのではないでしょうか?
しかし、最近は男女問わずプロテインを飲んでいる人が増えています。
プロテインにはどのような効果があるのでしょうか。
プロテインというと、粉末状のものやクッキー状のものを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
「プロテイン(protein)」とは英語で「タンパク質」のことを指します。私たちが普段食べている肉や卵に含まれるタンパク質と変わらないのです。
タンパク質は筋肉・臓器・皮膚・髪の毛などの体を構成する要素として重要なもの。特に、筋肉の形成においてタンパク質は不可欠です。
もう少しかみ砕くと、タンパク質とはアミノ酸の集合体のことです。
私たちの体は21種類のアミノ酸を必要としていますが、そのうち9種類は体内で作ることができません。ですので、食品から摂取する必要があります。
この9種類のアミノ酸のことを、「必須アミノ酸」といいます。
9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれているタンパク源は「完全タンパク質」とよばれています。
完全タンパク質で代表的なのが、動物性食品。
肉、魚、卵、乳製品などの動物性食品に多く含まれます。
植物性だと大豆やひよこ豆などの豆類に多く含まれます。ナッツやタネ類にもタンパク質は多く含まれますが、動物性食品に比べると必須アミノ酸のバランスが良くありません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」によると、成人男性の1日の推奨タンパク質摂取量は60g、女性は50gです。
しかし、食品からこの量のタンパク質を補おうとすると、毎日かなりの肉、魚、卵、豆などを食べなければなりません。
例えば、成人男性の1日に必要なタンパク質60gを満たすために、食べなければならない食品の目安はこれだけの分量です。
■ゆで卵
Mサイズ1つ(50g)あたりのタンパク質量=6.45g
⇒9.3個分
■鶏のささ身
100gあたりのタンパク質量=27.9g
⇒219g
■納豆
1パック(50g)あたりのタンパク質量=8.3g
⇒7.2パック
■鮭
1匹(100g)あたりのタンパク質量=25.2g
⇒2.4匹
1日に同じ食品ばかりを食べるわけではありませんが、毎日これだけの動物性食品や豆類をバランスよく取るのは難しい、という人も多いのではないでしょうか。
忙しいビジネスマンは、ついつい炭水化物中心の食生活になってしまいがちです。
そこで、いわゆる「プロテイン」をサプリメントとして飲むことにより、効率よくタンパク質を摂取できるのです。
プロテインには多くの種類があり、それぞれメリットやデメリットがあります。
動物性プロテインでメジャーなのはホエイとカゼイン。
植物性プロテインではソイプロテインが主流ですが、近年では植物性プロテインの種類も増えてきています。今注目されているピープロテインやヘンププロテインについてもご紹介します。
ホエイプロテインは、生乳からできているタンパク質の一つです。
ヨーグルトには、白っぽい液体(乳清)が入っていますね。この部分を粉末状に加工したのがホエイプロテインです。
乳タンパクの中でも、ホエイプロテインが20%を占めています。
ホエイプロテインの一番のメリットは、吸収が速いことです。
摂取後、数十分で血中に取り込まれ、素早く血中アミノ酸濃度を上げてくれます。すぐに体内でのタンパク質の合成がなされるため、トレーニングの前後に適しているといえます。
また、9種類のアミノ酸の中でも、筋肉の修復や生成に不可欠な3種類をBCAA(Branch Chain Amino Acids)といいますが、ホエイにはBCAAがカゼインよりも豊富に含まれています。
そのため、筋肉増強を目指す人や、筋肉の疲労回復をしたい人に向いています。
ホエイプロテインを含む多くの乳製品には、乳糖(ラクトース)と呼ばれる糖類が含まれています。多くの大人には、乳糖をうまく消化できない人がいます。これを乳糖不耐症といって、お腹の膨満感、消化不良や下痢を伴う人がいます。
乳製品でお腹が緩くなってしまう人は、要注意です。
ホエイプロテインにはコンセントレート(WPC)とアイソレート(WPI)という加工法があります。アイソレートは、タンパク質以外の成分を分離したものなので、乳糖の含有量は非常に少なくなります。
このため乳糖不耐症の人は、アイソレートまたはWPIと表記のあるホエイプロテインを選ぶことをおすすめします。
ホエイプロテインのもう一つのデメリットは、ニキビができやすくなる可能性があるということです。
ホエイを摂取すると、インスリン様成長因子(IGF-1)という物質の分泌が促されます。IGF-1の血中濃度が高いことと、ニキビには相関性があることがわかっています。
プロテインを飲み始めたらニキビが増えてしまったという人は、プロテインの種類を見直した方が良いかもしれません。
また、IGF-1の血中濃度が高いことが、乳がんを始めとする多くのがんの発症と相関性があるというエビデンスも数多く出されています。
カゼインプロテインもホエイと同様、生乳由来のタンパク質の一つです。
乳タンパクの80%を占めるのがカゼイン。
モッツアレラチーズをもっちりと、ブリーチーズをなめらかにするのは、カゼインの役割です。
カゼインがホエイと違う点は、吸収が遅いという点です。ホエイが素早く消化吸収されるのに対し、カゼインはゆっくりと時間をかけて吸収されていきます。
このため、ホエイよりも腹持ちが良いのがカゼインの特徴です。
また、カゼインには9種類の必須アミノ酸がバランス良く含まれています。
私たちの体は、長時間食事を摂らないでいると、糖新生というプロセスを経てタンパク質を分解し、エネルギーに変換してしまいます。
エネルギー源がない時は、何を分解するかというと、筋肉です。
ですので、せっかく鍛えて付けた筋肉も、何も食べない時間が続くと水の泡。
そこで、消化吸収がゆっくりおこなわれるカゼインプロテインを摂取することで、筋肉の分解を遅らせてくれるのです。
せっかく付けた筋肉を失いたくないという人や、長時間食事を摂れない時に活用したいプロテインです。
カゼインのデメリットとしては、ホエイと比べると混ざりにくく、均一性が低いことです。コップに入れてスプーンでかき混ぜるよりも、シェイカーやブレンダーに入れてよく混ぜると良いでしょう。
また、ホエイよりも価格が高いのも特徴です。
カゼインに乳糖は含まれていませんが、乳製品アレルギーの多くが、カゼインに反応するといわれています。乳製品アレルギーがある人は、カゼインプロテインは絶対にNGです。
また、乳タンパク不耐症(カゼイン過敏症)といって、カゼインを摂取した後の数時間~数日後に、膨満感、消化不良、下痢や便秘などを起こすことがあります。これは、摂取後にすぐに反応が起きる乳製品アレルギーとは違います。
乳製品アレルギーは、乳製品を食べるとIgEという抗体が反応し、くしゃみや鼻水などの呼吸器系や、肌のかゆみや蕁麻疹などの皮膚系の症状が出ます。
一方で、乳タンパク不耐症(カゼイン過敏症)は、IgGやIgAといった抗体が反応し、ゆっくりと消化器系の症状が出ます。このため、遅延性アレルギーともいわれています。
乳糖不耐症と症状が似ているので判断が難しいところですが、乳糖不耐症と自覚症状がある人でも、実は乳糖ではなくて、乳製品の別のものに反応していることがあります。その主要なアレルゲンが、カゼインなのではないかといわれています。
さらに、ホエイだけではなくカゼインでもIGF-1の分泌が増えるため、ニキビに悩まされている人は向かないかもしれません。
IGF-1とがんとの相関性も無視できないので、長期の使用には注意が必要です。
ソイプロテインは、大豆から作られたタンパク質です。
ソイは植物性でも、9種類のアミノ酸のバランスが取れた完全タンパク質です。
大豆は日本人が慣れ親しんだ食品でもあるので、比較的取り入れやすいのでは。
大豆プロテインの一番のメリットは、植物性であるということです。
ホエイやカゼインと違って植物由来のプロテインなので、ベジタリアンやビーガンの人にも適しています。
もちろん乳製品フリーなので、乳糖不耐症や乳製品アレルギー、乳タンパク不耐症の人にもやさしいプロテインです。
また、ホエイやカゼインと違って脂肪分をほとんど含まないので、カロリーも低め。
カゼインと同じように消化がゆっくりなので、腹持ちも良いです。
ダイエットのためにタンパク質を増やしたいという人に、おすすめできるプロテインです。
ソイプロテインの懸念点の一つが、反栄養素を含むという点です。
反栄養素とは、栄養の吸収を妨げてしまうもので、大豆にはフィチン酸やシュウ酸などが含まれています。これらは鉄、カルシウム、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルの吸収を妨げてしまいます。
ゆっくりと発酵された大豆からは、反栄養素はほとんど取り除かれています。ですので、日本の伝統食である醤油、味噌、納豆は発酵されているので問題ありません。
フィチン酸を取り除くには24時間大豆を水に浸けなければなりませんが、大量生産され、かつ非発酵のソイプロテインには、フィチン酸が残留していることがあります。
もう一つの懸念点が、大豆イソフラボンです。
大豆イソフラボンは女性ホルモンの働きを整えると、一般的に認知されています。
大豆イソフラボンは構造的に女性ホルモンのエストロゲンに似ているので、エストロゲンの低下してくる更年期障害の女性には良いと考えられています。
エストロゲンは骨密度を一定のレベルに保っていてくれるホルモンなので、エストロゲンが著しく低下する閉経後の女性において、骨密度の向上に大豆イソフラボンが効果的であるという研究もあります。
一方で、閉経前の若い女性にとっては、大豆イソフラボンの過剰摂取は逆効果である可能性があります。
女性ホルモンはエストロゲンだけではなく、もう一つプロゲステロン(黄体ホルモン)というものがあります。生理周期の前半にはエストロゲン、後半にはプロゲステロンが優勢になることで、バランスを保っています。
ですので、エストロゲンと似た働きをするイソフラボンを摂りすぎても、エストロゲンとプロゲステロンのデリケートなバランスが崩れてしまうことがあるのです。
健康な生理周期の女性にイソフラボンを投与すると、プロゲステロンの値が低下したり、生理周期に乱れが起こることがあります。
イソフラボンの過剰摂取に関しては、内閣府の食品安全委員会も注意喚起をしています。
閉経前の女性に関しては、イソフラボンの摂取量を1日30g以下にするように推奨しています。
「イソフラボンは女性ホルモンを整える」という謳い文句を鵜呑みにして、過剰摂取をしないようにしましょう。
また、大豆は乳製品、ピーナッツ、卵と並んでアレルギーの多い食品でもあります。
そのため、海外では大豆は主要アレルゲンとして認知され、「ソイフリー」の食品も増えてきています。
ホエイもカゼインもソイもデメリットが気になるとなると、一体どのプロテインがいいの?!と迷うかと思います。
そこで近年注目されているのがピープロテイン。えんどう豆由来のタンパク質です。
えんどう豆というとグリーンピースを思い浮かべるかもしれませんが、プロテイン粉末として出回っているのは黄えんどう豆の方です。
ベジタリアンブームやアレルギー人口が増える中、うなぎ登りで拡大しているのがピープロテイン市場です。
ソイと並んで植物由来のピープロテイン。ソイのようにイソフラボンの懸念やアレルギーも少ないため、従来のプロテインがNGという方に向いています。
また、植物由来のプロテインなのにBCAAも豊富。
筋疲労回復や免疫アップに効果的なアミノ酸の「アルギニン」に関しては、ホエイの3倍も含まれています。
ホエイのように吸収は速くはないものの、筋肉増強にもダイエットにも一躍買ってくれるプロテインといえます。
ホエイやカゼインに慣れている人は、豆っぽい味がどうしても気になるという人もいるようです。
また、ピープロテインは完全タンパク質ですが、必須アミノ酸の一つである「メチオニン」の含有量だけ低くなっています。
一方で、同じく植物由来のライスプロテインは「メチオニン」が多く、ピーとブレンドするとバランスが良くなります。
ピープロテインとライスプロテインのブレンドを扱っているブランドもありますので、探してみてください。
とはいえ、メチオニンはお米にも肉にも豊富に含まれているので、普段きちんと食事を摂っていれば、不足することは稀です。
植物由来のプロテインのオプションの一つとして、海外で人気が高いのがヘンププロテイン。
ヘンプとは麻の実のこと。
麻の実をすりつぶしたのがヘンププロテインです。
ヘンププロテインのメリットの一つは、消化しやすいという点。
植物性タンパクよりも動物性タンパクの方が消化されやすい性質をもっていますが、挽いた麻の実の91–98%は消化されるということがわかっています。
また、ヘンプにはエデスティンとアルブミンというタンパク質も含まれており、これが消化を助ける働きをするのではないかといわれています。
ヘンププロテインのいいところは、タンパク質だけではなく他の栄養素も摂れるところ。
現代人に不足しがちな食物繊維やマグネシウム、亜鉛、鉄、銅なども摂取できます。
それだけでなく、脳や心臓の健康に欠かせないとされるオメガ3脂肪酸も含まれています。
タンパク質のためだけでなく、他の栄養素を補いたい人にはおすすめのプロテインです。
ヘンプには食物繊維やミネラルなど他の栄養素も含まれているため、グラム当たりのタンパク質含有量は他のプロテインに比べると低くなっています。
また、ざらっとした質感であるため、ブランドによっては飲みにくいと感じることがあります。
「泥みたい」「草みたい」というような声もあります。
グリーンスムージーに入れるなど、他の物とブレンドして飲むことをおすすめします。
ここまでプロテインの種類やそれぞれのメリットとデメリットを見てきました。
確かにプロテインにはうれしい効果がたくさんありますが、体作りにしろダイエットにしろ、プロテインだけに頼るべきではありません。
健康な体を保つためにも、ダイエットのためにも、まずは野菜・タンパク質・炭水化物のバランスの取れた食事が必要です。
軽い気持ちで、プロテインを食事と置き換えるのは絶対にNGです。
プロテインはあくまでサプリメントとして、食事で足りないタンパク質を補う意味で、活用してみてください。
プロテインをどうやって日常生活に取り込めばいいかわからないという方は、まず間食をプロテインに変えることから始めてみてもいいかもしれません。
目的によってプロテインを使い分け、より健康な生活を目指しましょう。
元記事「 疲労回復、美肌効果も!ホエイ、ガゼイン、ソイ、ピー、ヘンプ。あなたに合ったプロテインは?」は2017年8月18日にBUSINESS LIFEに掲載されたものです。
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