「歯並びが気になるので矯正を考えています。」
小児歯科では、このようなご相談を受ける機会が年々増えています。保護者の方の多くは、歯がガタガタに並んでいる、前歯が出ている、噛み合わせが心配など、「歯並びそのもの」に注目されています。しかし、現代の小児矯正では歯だけを見ているわけではありません。
実は歯並びの問題は、顎の成長、呼吸、舌の位置、唇の力、飲み込み方、姿勢など、全身の発育と深く関係しています。そのため最近では、「歯を並べるための矯正」ではなく、「健全な成長をサポートするための矯正」という考え方が重要視されています。
目次
EFラインとは、横顔のバランスを評価するための考え方の一つです。一般的には鼻先と顎先を結んだラインを基準として、唇の位置や口元の突出感を評価します。横顔を見たときに、口元が前に出すぎていないか、唇が自然に閉じられるか、顔全体のバランスが整っているかを確認します。
もちろん人それぞれ顔立ちは異なりますので、EFラインだけで良い悪いを判断することはできません。しかし、将来の成長予測や顔貌の変化を考える上で重要な参考指標になります。
歯並びには遺伝の影響もありますが、口呼吸、指しゃぶり、舌癖、頬杖、柔らかい食事中心の生活、猫背などの姿勢不良も大きく影響します。これらの習慣が続くと、本来の顎の発育が十分に行われなくなります。
歯は並ぶ場所が必要です。顎が小さいまま成長すると歯が並ぶスペースが不足し、叢生(ガタガタの歯並び)、上顎前突(出っ歯)、開咬、反対咬合などの問題につながることがあります。
近年特に注目されているのが口呼吸です。本来、人間は鼻で呼吸することが基本です。しかしアレルギー性鼻炎や慢性的な鼻づまり、口周囲筋の機能低下などにより、口呼吸の子どもが増えています。
口呼吸になると常に口が開いた状態になります。すると舌が下がり、本来上顎を支えている力が失われます。その結果、上顎の発育不足、歯列の狭窄、出っ歯、口元の突出などが起こりやすくなります。
また口呼吸は、むし歯、歯肉炎、口臭、睡眠の質の低下にも関係すると考えられています。そのため歯並びだけでなく健康全体に影響する問題として考える必要があります。
かつての矯正治療は歯を動かして並べることが中心でした。しかし現在の小児矯正では、成長を利用して正しい発育を促すことが大きな目的となっています。
成長期は骨格が大きく変化する貴重な時期です。この時期に適切な介入を行うことで、顎の発育をサポートし、歯が並ぶスペースを確保し、鼻呼吸を習慣化し、正しい舌位を獲得することを目指します。
歯並びは歯だけで決まりません。舌、唇、頬の筋肉から常に影響を受けています。そのため、どれだけ矯正装置で歯を動かしても、舌の位置や口の使い方が改善されなければ後戻りすることがあります。
MFTでは、舌の正しい位置、正しい飲み込み方、鼻呼吸、口唇閉鎖などをトレーニングします。風船トレーニングやストロートレーニングなどもその一例です。
口唇閉鎖力とは、唇を閉じる力のことです。この力が弱いと、口が開きやすくなり、口呼吸や歯列不正のリスクが高まります。
「いつも口がぽかんと開いている」という状態は単なる癖ではなく、口腔機能の発達に関わるサインかもしれません。
一般的には6歳前後で相談されることが多いですが、一律に決まっているわけではありません。口呼吸がある、口が閉じられない、歯並びが大きく乱れている、いびきをかく、発音が気になるなどの場合は早めの相談が有効です。
小児矯正は単なる歯並びの治療ではありません。将来の健康を支えるための成長支援です。歯だけを見るのではなく、顎の発育、呼吸、舌の位置、口唇機能、飲み込み方を総合的に評価することが大切です。
EFラインは、その結果として現れる横顔のバランスを評価する一つの指標です。大切なのは、しっかり噛めること、正しく呼吸できること、健康的に成長できることです。成長期には成長期にしかできない治療があります。


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